研究課題
前年度に引き続き、立方晶系RT_4X_12型充填スクッテルダイト(立方対称カゴ構造の中心に希土類イオンが位置する高い対称性のため多極子自由度が低温まで残り、高次の多極子秩序が低温で発現しやすい)の幾つかの化合物の極低温比熱測定を進めた。測定系の整備も平行して行った。1. PrRu_4P_12:スカラー型十六極子秩序の可能性が指摘されている低温秩序状態で、非磁性的な起源により、Pr4f電子三重項基底状態が約1K程度エネルギー分裂し、磁気双極子の自由度が凍結しているように見えることをこれまでに見出していた。さらに測定およびデータ解析を進め、Pr核と4f電子の結合が主要な役割を果たしている可能性を調べた。さらに、三重項が持つ四極子が付加的に寄与している可能性を探った。2. GdRu_4P_12純良単結晶試料を用いた測定を進めた結果、反強磁性秩序相の低温低磁場領域において、4f電子磁化がわずかな異方性を示すことが観測された。Gdイオン4f電子が軌道自由度を持たないLS結合描像では、この実験結果を理解することは困難である。よって、jj結合的要素が無視できないことを示唆している可能性があることが見えてきた。3. Pr(Os_<1-x>Ru_x)_4Sb_12:非従来型の超伝導を示すこの系のPr結晶場基底状態の移り変わりや、磁場誘起四極子秩序相の元素置換効果を調べるため、極低温磁場中比熱測定を進めた。磁場誘起四極子秩序相が元素置換に非常に敏感であることが明らかとなった。
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Journal of Physics : Conference Series 200
ページ: 012125(5)
Chap.1 Magnetic Properties of Filled Skutterudites. Handbook of Magnetic Materials, Vol 18(Elsevier)
ページ: 1-110