本研究は銅酸化物高温超伝導体においてスーパークリーンな系であるYBa2Cu408 (Y-1248)単結晶を用いて、超伝導における競合秩序や隠れた秩序変数の共存などの精密な物性を明らかにすることを大きな目標として行っている。 平成20年度は解析、実験環境の構築を主として行った。京都大学には、超音波モーターによる電気的な回転機構を有するNMRプローブがありこれを用いると試料の磁場に対する角度依存性を測定することができる。この回転機構に取り付けるために必要な治具として試料およびNMRコイルを固定するステージを作成した。このステージは回転中心がNMRコイルの中心と一致するため、周りの環境の変化させることなくコイル内の試料の向きのみを変化させることが可能となる。この回転機構は電気的な回転であるために回転時に発熱の問題はあるが、機械式に比べ熱流入なども少なく安定している。このステージを用いることにより、外部磁場に対して試料空間の中心を固定して結晶軸を回転させることができるようになり、c軸配向試料や単結晶試料による角度依存NMR実験を実施することが可能となった。並行して解析用のコンピュータを購入し、解析環境の整備も行った。解析用コンピュータとしてApple社のMacBookを選択した。同時に、解析に必要となるソフトウェアも購入し、解析用コンピュータの構築を進めた。この結果、予備実験により得られたデータの解析も順次進行している。平成20年度の成果を元に、平成21年度はさらなる解析、実験を進めていき、混合状態での超伝導と隠れた秩序変数(SDW)の共存などの高温超伝導固有の性質について明らかにしていく。
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