本研究は銅酸化物高温超伝導体においてスーパークリーンな系であるYBa_2Cu_4O_8(Y-1248)単結晶を用いて、超伝導における競合秩序や隠れた秩序変数の共存などの精密な物性を明らかにすることを大きな目標として行っている。 実験結果の解析、実験環境の構築を主として行ってきた。京都大学にある超音波モーターによる回転機構を用いたNMR実験を予備的に単結晶Rb_2Cu_3SnF_<12>を用いて行った。この実験にはこれまでに作成した試料およびNMRコイルを固定するステージを使用した。同時に信号感度の改善をCu_2OCl_2試料の測定を通して行い、小さな試料、小さな信号に対する信号雑音比の改善に成功した。その結果、小さな単結晶Rb_2Cu_3SnF_<12>における磁場に対する角度依存性を測定することができた。この回転機構は電気的な回転であるために回転時に発熱の問題はあるが、機械式に比べ熱流入なども少なく安定している。ごく僅かな試料でもこのプローブを用いることにより単結晶試料による角度依存NMR実験を実施することが可能であることが実証された。これまでの成果を下に、微少試料を用いたNMRをCr-jarosite単結晶を用いて磁気異方性の測定を行った。試料サイズが0.1mmx0.1mmx0.02mm程度の極小さな試料を用いたNMRを行うことに成功し、試料のc軸に平行な磁場と垂直な磁場での測定から、Cr-jarositeのゆらぎの磁気異方性を観測することができた。このように、微少単結晶に対するNMR測定の環境は整えることができ、このスーパークリーンな系であるYBa_2Cu_4O_8(Y-1248)単結晶を用いたNMRに応用し、詳細な知見を得ることが可能となっている。
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