長距離相互系では、スピン間の相互作用の数がスピン数の二乗に比例して増加するため、何らかの近似なしにシミュレーションを実行することはこれまで大変困難であった。我々は一般の長距離相互作用系に対するオーダーNモンテカルロアルゴリズムを開発した。この方法では、相互作用のレンジ・系のサイズに依らず、定数時間で個々のスピンの状態更新を行うことができる。また、相互作用のカットオフ等の近似は一切用いておらず詳細釣合の条件を厳密に満たす。このアルゴリズムの基礎となっているのは、Walker法である。このWalker法では幾何学的な埋め立ての方法を用いて、任意の分布にしたがった整数乱数を定数時間で生成することが可能となっている。我々はこの埋め立ての概念をマルコフ連鎖モンテカルロ法の遷移確率の決定に拡張することに成功した。この方法では、一般の重みについて棄却率を最小化することができる。さらには、詳細釣り合い条件を積極的に破ることにより、配位空間上に正味の確率流が導入され、従来のメトロポリス法や熱浴法に比べて大幅に緩和を加速することが可能となった。我々はこの方法を、格子とスピンの結合のある系に応用し、二次元における新しいスピン液体状態の存在を示唆する結果を得た。また、量子拡張アンサンブル法を用いた量子エンタングルメントエントロピーの(測定方法の開発、局所Z2ベリー位相の計算など、様々な新しい方法の開発に成功した。
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