本年度は液体カルコゲンのvoid構造解析のために、Se80Te20組成の試料についてX線回折測定を行った。この試料は800℃以上の高温領域で電気伝導度が上昇し半導体-金属転移を生じるほか、比熱、密度などに異常を示すことが知られており、高温領域での構造解析に興味が持たれている。高温高圧下における測定のために、単結晶サファイヤセルを広島大学の協力の元に作成した。実験はSPring8の高温高圧実験ステーションBL28B2にて温度1000℃圧力1600barまでの範囲において強力X線を用いたエネルギー分散法により散乱強度の測定を行った。得られたデータから精度の良い構造因子を得ることができた。構造因子をRMC法に適用し、構造モデルの構築を試みた。その結果に対しvoidのサイズ分布を調べた。低温の半導体領域ではSeに見られる分布を示し鎖構造であることが示された。一方、半導体-金属転移領域においては、鎖構造より大きいvoidサイズのピークが生じることを見出した。この結果は液体Se-Teの鎖構造の変化によりネットワークあるいは環化が生じ電子的物性が変化していることを示す重要な結果である。また、このときの構造変化により温度上昇にも関わらず体積収縮が生じていると考えられる。今後中性子散乱測定を行い部分構造まで解析を進める予定である。 また、液体のvoid構造解析のために液体水銀、アルコール水溶液、溶融塩の構造解析を進めた。なかでも液体水銀は温度上昇による体積膨張に伴って金属-非金属転移を生じる。この転移の際、金属的領域が非金属的領域に変わっていく様子をvoid構造を用いて表現することが出来た。
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