研究概要 |
液体カルコゲン(Se,Te)に見られる半導体-金属転移の起源を探るために、X線散乱データをもとに逆モンテカルロ(RMC)法を用いた構造モデル構築および構造解析を行ってきた。カルコゲンのように液体状態でも共有結合をもつ物質では通常のRMC法では構造モデルに非現実的な原子配置が含まれてしまう欠点があった。今年度RMC法の原子再配置の条件を検討することにより、初めてこのような配置の生成を無理なく抑制することに成功した。最近同様な視点を持つ研究は多く行われており、その一つとしてRMC法の発展に寄与していると考えられる。また、多くの構造変化は中距離のスケールで生じると考えられるが、いままでの構造解析法ではその変化をとらえることが難しかった。空隙を用いた構造解析は鎖や環が空隙を取り巻いている様子を解析することができ、中距離構造を知る点で有利である。このような結果をもとに今年度液体Se80Te20混合系のX線散乱データについて構造解析を行い、いくつかの特徴的な空隙のサイズ分布を解析した。その結果、温度上昇に伴う特異な密度変化、半導体-金属転移についてらせんからジグザグへの構造変化と空隙の変化とをもとに説明することに成功した。 以上のほかに、液体水銀、鉄の構造についてRMC法を用いた構造解析を行い発表した。また、これまですめてきたアルコール水溶液の中長距離構造、溶融塩の中距離構造解析のための手法開発を続けている。
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