SeやTeといったカルコゲン元素の液体混合系に見られる半導体-金属転移の起源を探るために、X線散乱データをもとに逆モンテカルロ(RMC)法を用いた構造モデル構築および構造解析を行ってきた。今年度はこれまでの混合系に関する成果を純粋な液体Seについて適用することを目指した。Seは高圧下でのみ半導体-金属転移を生じるので液体Se高温高圧下のX線回折実験をSPring-8を用いて実施した。その結果、圧力200barにおいて1400℃まで、また圧力1600barまでの高圧下で1200℃までの散乱強度データを得ることができた。このデータをもとに構造因子をもとめ、3次元構造モデルを構成した。このためには標準的なRMC法について我々が改良した方法を用いSeの鎖構造を保存する構造モァルを得た。こののち中距離構造の解析をおこなった。多くの構造変化は中距離のスケールで生じると考えられるが、いままでの構造解析法ではその変化をとらえることが難しかった。一方、空隙を用いた構造解析は鎖や環が空隙を取り巻いている様子を解析することができ、中距離構造を知る点で有利である。このような手法をもとに今年度液体SeのX線散乱テータについて構造解析を行い、いくつかの特徴的な空隙のサイズ分布を解析した。その結果、これまでの液体カルコゲン混合系の相転移と同様な空隙のサイズ変化を見出すことができ、同様な機構により相転移が生じていると見られることが分かった。 また、これまですめてきたアルコール水溶液の中長距離構造、液体水銀の金属一非金属転移の機構解明のための手法開発を続けている。
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