研究概要 |
これまでの研究成果をふまえて,特に時間空間的変調効果を利用した潤滑現象を中心に調べた。その過程で,いくつかのナノ界面物理系を想定して,そこでの潤滑の発生の物理機構及び物理特性としての非線形ダイナミクス及び緩和効果と動的リエントラント現象等の詳細を理論解析及び数値シミュレーションの方法で明らかにした。なお,シミュレーションのためのプログラム開発・改良も重要視して適宜行った。解明した具体的事項は以下のとおりである。現象の全体像を解析して把握し,さらに超潤滑も含む各潤滑状態の詳細を理解するために,外場及び界面に関するパラメータ空間を導入して,その中で各種の潤滑状態を記述できる相図を明らかにした。この相図において異なる相間の相転移と臨界現象等の基本的性質の詳細は統計物理的方法で解明できた。これをもとに相図の全体像を理解して,新奇な潤滑現象全体の普遍性等を明らかにした。そして,界面の相互作用,表面配列の整合性などが絡み合って発現する動的コヒーレントな運動や長時間緩和効果等が上記潤滑に重要な影響を及ぼすことが明らかになった。そして,上記の新奇な潤滑現象の応用的側面を考慮・検討して,実験方法及び機械的な応用可能性を議論した。また,関連の物理系として,周期構造をもつ位相系に着目し,そこで現れる新奇な有方向性運動の物理機構及び動的特性についても解析した。この結果と上記の成果をもとに,新奇な並進運動の物理について包括的な理解を得た。さらにこれまでの研究結果を総括して,新奇な潤滑現象の全体像の統一的理解を行った。
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