ペロフスカイト構造(ABO3型)及びその関連の類似構造をもつ酸化物は、誘電体から電気伝導体、さらに超伝導体に至るまで幅広存在し、興味ある物性を示す。しかも類似構造のところで、強誘電性でも超伝導性でも転移点が高くなったり、構造相転移の相境界近傍で、応用上の有用な特性が見つかったりする。それは、構造に特有のフォノンが特異な物性の発現に重要な役割を担っている証拠で、相転移をもたらす量子ゆらぎの正体が鍵を握っている。 1.ペロフスカイト型強誘電体の相境界(リラクサー特性) 強誘電体混晶において、Cubic-TetとCubic-Rhomboの相境界が出現することを現象論の範囲で統一論を試み、さまざまな酸化物を同一の相図上で説明することに成功した。リラクサー特性が出現するモルフォトロピック相境界を理論的に導出し、逐次相転移との関係を予言し、CREST研究会で発表した(2008.10)。 2.量子ゆらぎによる、常誘電性と高温超伝導 SrTiO3の量子常誘電性について、O(16)-O(18)同位体置換による強誘電性転移の臨界現象をソフトフォノン理論で説明し、CREST研究会で発表した(2008.5)。一方、同様の構造をもつ酸化物高温超伝導体に対しては、先の誘電体における2種類のTOフォノンによる量子効果の代わりに、2種類のLOフォノンが、La系、Y系、Bi系という積層構造の変化につれて変わるモデルを提唱し、超伝導機構への関与や擬ギャップの正体を説明する理論を提出した。発表は、低温物理国際会議で口頭発表(2008.8)、及び論文発表(2009.3出版)を行なった。
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