研究課題/領域番号 |
20540369
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
松下 栄子 岐阜大学, 工学部, 教授 (20183105)
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キーワード | 強誘電性 / 超伝導 / ペロフスカイト型酸化物 / 相転移 / 量子効果 / リラクサー / イオン伝導 / 相境界 |
研究概要 |
ペロフスカイト型もしくはその関連の類似構造をもつ酸化物に着目し、強誘電体混晶における相境界で実現する有用な特性や、酸化物中の高速イオン伝導によるクリーンな燃料電池の開発、量子ゆらぎに起因したエキゾティックな超伝導の導出など、応用上注目される物理現象に共通する機構の理論的解明にとりくみ、研究成果を挙げた。 1.量子ゆらぎによるエキゾティックな超伝導 ペロフスカイト構造の変形型酸化物である高温超伝導体において、転移点Tcの同位体効果の異常を光学フォノンLOの役割から説明したが、さらに拡張して、近年話題となったフラーレン超伝導体の実験結果を解釈した。高温超伝導体と類似の相図を示すCs_3C_<60>の高いTcや、fcc構造もしくはA15型をとる構造選択が何で決定されるかを解析理論で明らかにし、本論文2報を出版した(2011.5&7)。 2.強誘電性ペロフスカイト型酸化物の混晶における相境界特性 強誘電体酸化物の混晶で、デバイス応用に有望なリラクサー特性を解明することが重要テーマとなっている昨今、Cubic相から転移した低温でのTet相とRhombo相の境界領域(モルフォトロピック相境界、MPB)の出現条件について、ランダウ現象論と第一原理計算とを照合させた理論を作って証明した(国際会議EMFで口頭発表、論文発表、2011.6)。さらに、従来の現象論では説明不可能であった外場効果(圧力効果、電場効果)の導出にも成功しており、学会発表(2012.5)と論文発表(2012秋頃)を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.超伝導分野に関しては、当初計画していた理論(高温超伝導酸化物と共通するエキゾティックな超伝導機構を有するフラーレンや2ホウ素マグネシウムの理論式の導出と光学フォノンの役割)はほぼ完成している。 2誘電体分野に関しては、現象論レベルで可能な限りの説明は既に達成しており、念願の微視的理論に着手している。これまで誰も成功しなかったペロフスカイト酸化物の微視的理論の完成が目的であり、順調に完成しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
5カ年計画で科研費を申請し、4年を経過したが、最近1,2年の進展は目覚ましく、学会や国際会議での口頭発表や論文発表など、研究成果の公表が目に見えて進展してきた。あと1年で残りの計画を遂行してしまわねばならないが、これまで前人未到とされた変位型相転移の強誘電性の微視的理論の開発や、それを用いたリラクサー特性の解明など、ペロフスカイト構造をもつ酸化物に特有な物理現象とその有望な応用、秩序・無秩序型相転移との統一理論の完成時期が近づいて来ている。当科研費のテーマ攻略の最大の産物として、その成功を見届けたいと考え、研究計画を遂行している。
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