ペロフスカイト構造(ABO3型)および関連する類似構造をもつ酸化物に着目し、強誘電体混晶の相境界で出現する有用な特性や、量子ゆらぎに起因したエキゾティックな超伝導の導出など、物性物理の課題の中で応用上メカニズムの解明が急務とされる物理現象をとりあげ、理論的解明にとりくみ、研究成果を挙げた。 1. 強誘電性ペロフスカイト型酸化物の混晶における相境界特性 デバイス応用に有望なリラクサー特性を解明するため、ペロフスカイト型強誘電性酸化物の混晶において、競合の強い相境界の出現条件を説明した。これはCubic相から転移した低温におけるTet相とRhombo相の境界領域(モルフォトロピック相境界、MPB)であり、ランダウ現象論と第一原理計算を照合させた2次転移の理論で説明した。さらに1次転移の理論に発展させ、混晶の相境界を逐次相転移の出現領域と関連付けた変位型相転移の統一理論にして解釈した(論文発表済、2012.7)。また、外場効果(圧力効果、電場効果)の実験結果を初めて説明し、学会発表(2012.5)と論文発表(2012.10)を行なった。現象論レベルで可能な限りの説明に成功しており、リラクサー出現に関する初の微視的理論を順調に開発中である(発表準備中)。 2. 量子ゆらぎによるエキゾティックな超伝導 ペロフスカイト構造の変形酸化物である高温超伝導体と類似の相図を示すフラーレンCs3C60について、高いTcや、fcc か A15型かの構造選択が決定される条件を解析理論で明らかにした。それに基づき、高温超伝導酸化物と共通するエキゾティックな超伝導機構を有する物質として、各種フラーレンや2ホウ素マグネシウムに関する拡張理論式を展開し、光学フォノンの役割を解明して、非調和振動が利いたβパイロクロア酸化物の超伝導理論へ発展させた(論文準備中)。
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