研究概要 |
研究計画の1年目として、平成20年度は、交付申請書にも記載したように、多重振り子および類似の系である一般鎖状系(planar chain system,平面鎖系)を題材として、拘束のある系におけるエネルギー等分配則についての研究を行った。ここではかなりの進展が見られた。主な結果は下記のとおりである。 ・ エネルギー等分配則が成立しているときでも、平均運動エネルギーは粒子ごとに異なるが(これは既知)、特に上記の系では、末端およびその近傍の粒子の平均運動エネルギーが大きくなるという著しい結果が得られた。これは数値的および解析的(近似)にも示された。 ・ また、この結果は2次元に限らず3次元でも同様の現象が見られることが近似計算により解析的に示された。 ・ 初期的な結果ではあるが、拘束が剛体としての厳密な拘束ではなく、質点間が大きいけれども有限のばね定数でつながれている場合を調べた。その結果、有限の時間の間は、系の平均運動エネルギーの分布は剛体的であること、すなわち、末端およびその近傍の粒子の運動エネルギーが大きくなることが数値計算から示された。この結果は、実際の自然界での高分子、タンパク質などの鎖状多体系においても、結合が硬い場合には、エネルギー等分配則が破れて末端の粒子の平均運動エネルギーが大きくなるとがありうることを示唆している。これは、高分子やタンパク質などのダイナミクスにおいて、まったく新しい視点からの極めて有用な発見であると考えられる。 以上の結果は数回にわたって学会にて発表された。論文は現在投稿中である。
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