研究概要 |
研究計画の2年目として、平成21年度は、交付申請書にも記載したように、多重振り子および類似の系である一般鎖状系(planar chain system,平面鎖系)、また、質点が硬いばねでつながれたspring-chain systemを題材として、拘束のある系およびそれに近い系におけるエネルギー等分配則についての研究を行った。主な結果は下記のとおりである。 ・拘束系における結果のうち、末端粒子の活発な運動を数値的および解析的に示した論文が出版された。また、粒子間に相互作用ポテンシャルがある場合にも、同様に末端部粒子が活発な運動をすることが分かった。 ・前年度に引き続き、拘束が剛体としての厳密な拘束ではなく、質点間が大きいけれども有限のばね定数でつながれている場合を調べた。その結果、有限の緩和時間までの間は、系の平均運動エネルギーの分布は剛体的であること、即ち、末端およびその近傍の粒子の運動エネルギーが大きくなることが数値計算から示された。 ・上記について、エネルギー等分配が実現する緩和時間を理論的に評価することに成功した。評価には、系内に複数の大きく違うタイムスケールを持つ部分系が共存する場合のエネルギー移動速度を議論したBoltzmann-Jeans理論を用いた。この結果は、実際の自然界での高分子、タンパク質などの鎖状系においても、結合が硬い場合、エネルギー等分配則が破れて一部の粒子が活発に運動する事がありうることを示唆している。これは、高分子やタンパク質などのダイナミクスにおいて、全く新しい視点からの極めて有用な発見であると考えられる。 以上の結果は数回にわたって学会にて発表された。論文は現在投稿中である。 ・双曲型磁場中での荷電粒子の運動については準備的な計算を進めている。 ・重力場中での微笑天体の運動についての調査を継続中である。 ・シミュレーション結果、および、以前制作した多重振り子の運動の様子を撮影した動画をインターネット上に公開し、広く一般に見てもらえるようにした。
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