近年、理論、実験ともに関心を集めた「磁化プラトー」の現象は、理論的にはある種のボゾン的な磁気励起の「絶縁体状態」と見なせる。平成20年度の研究で、これまで理論的、実験的に知られてきた、元の結晶の周期性に起因するクラス(バンド絶縁体の類似物)や、直交ダイマー系SrCu_2(BO_3)_2 (SCBO)のように磁気的なボゾンが自明でない結晶状態を形成するタイプのものとは本質的に異なる新しいタイプのプラトーを見いだしたが、その微視的機構をさぐる研究を行った。磁場中磁性体の他の問題として、今なお新しい興味深い実験結果を生み出しつつある直交ダイマー系物質SCBOを念頭に置いて、プラトーのような磁気的な超構造が形成されている時の磁気励起スペクトルの理論的考察を行った。現実の磁気共鳴スペクトルなどを理解する上でこのような研究は重要である。また、従来の「局所的な対称性の破れ」の概念では捉えきれないトポロジカル秩序を実現するパラダイム的な模型である「量子ダイマー模型」を拡張し、その相図を調べた。本課題の主要課題である、「競合量子相の統一的アプローチ」に関して、Contractori Renormalization (CORE)法を用いた二次元量子磁性体の相構造の研究を完成させた。ここ数年、非常に関心を集めている「トポロジカル物質」をどのように特徴づけるか、というのは重要かつ難しい問題であるが、手始めとして、スピンと電荷の自由度からなるある一次元模型を用いて、そのトポロジカルな性質を考察した。
|