研究概要 |
実在のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)から得られたリンク構造とノード特性量(料理やファッションといった特定の対象に対するSNS利用者の興味の有無を0または1という二値に数値化したもの)の実データを入手し,このネットワーク上の酔歩から得られるノード特性量(0と1)のランダムな時系列に対する大偏差統計解析を行った結果を査読のある学術論文に掲載し,さまざまな学術会合で発表した.特定のノード特性量の局所平均値を与えるネットワークの局所構造がレート関数などの大偏差統計関数の非解析性として抽出され,カオス力学系の局所軌道拡大率の大偏差統計関数の非解析性(q相転移)がカオス的なアトラクタの特異な局所構造を特徴づけている状況によく似ていることを見出した.また,研究課題名の「大偏差統計解析の新たな展開」という題目にふさわしい,森の射影演算子法を用いた大偏差統計関数の数値解析手法の提案に関する研究報告や過渡的な時空の乱れが生じる系での大きな揺らぎを考える上での導入となる研究報告を行った.前者の報告では,実測の時系列(信号)から定義に従った大偏差統計関数の分配関数を求めた上で,レート関数を求めると,有限サンプル効果と呼ばれる観測可能な揺らぎの幅が時系列の長さや粗視化する時間幅といったパラメータに依存する制限を受けるが,提案手法の場合,分配関数が従うある種の運動方程式を近似的に解くことになるので,有限サンプル効果の制限を受けず広い範囲の揺らぎを捉えることに成功した.また,これにより,ローレンツ系に現れる局所軌道拡大率が発散することで現れる新たなタイプのq相転移(大偏差統計関数の非解析性)が拡大率スペクトル(局所軌道拡大率のレート関数)の直線部分として現れることを示し,その可解な一次元カオス写像モデルも合わせて提案した.
|