研究課題
曲がりをもつ渦構造について、そのダイナミクス、特に安定性およびカオス・乱流に至るルートを解明し、渦のダイナミクスにおける曲がりの普遍的な効果を明らかにするのが本研究全体の目的である。今年度はそのために(1)太い渦輪のダイナミクス、(2)らせん渦のダイナミクス、(3)屈曲渦のダイナミクスについての研究を行った。(1)においては、オイラー方程式の定常解であるHi11の球形渦を太い渦輪の代表例として取り上げ、その安定性を短波長安定性解析により調べた。その結果、細い渦輪と同じように曲率不安定性と楕円型不安定性が存在することを示すことができた。さらに、曲率の効果と歪み流の効果の結合による第三の不安定性を新たに発見した。これは太い渦輪特有のものである。第三の不安定性の成長率は曲率不安定性と同様の傾向を示すことも明らかにされた。(2)においては、らせん渦の安定性を短波長安定性解析により調べ、やはり曲率不安定性が存在することを示すことができた。さらに、らせん渦の特徴である「捩れ」と「回転」の効果により曲率不安定性が変調を受けることを明らかにした。(3)においては、屈曲波が誘起する2次不安定性を3波共鳴の立場から捉え直し、不安定波がある程度発達した弱非線形領域に理論を拡張・展開した。以上のように、曲がりをもつ渦構造として典型的なものである太い渦輪、らせん渦、屈曲渦に対する曲がりの効果の渦構造のダイナミクスへの影響、特に安定性への表れ方を明らかにするという本年度の目的を達成することができた。
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Physics of Fluids 21
ページ: 014104
京都大学数理解析研究所講究録「オイラー方程式の数理 : 渦運動150年」 1642
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九州大学応用力学研究所研究集会報告「乱流現象及び多自由度系の動力学, 構造と統計法則」 20ME-SB
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