1.グラフェン関連物質において起こり得る、電流やスピン流の量子輸送現象の分類を完結させた。電荷/スピン量子ホール効果の実現には、Haldane模型、Kane-Mele模型に代表されるような特殊な(少なくとも各スピン成分毎に時間反転対称性を破る)ハミルトニアンを要する。しかし、グラフェンに代表されるように運動量空間内に2つのディラックフェルミオンが存在する場合、より現実的な交替化学ポテンシャルやスピン密度波の平均場の存在により、各フェルミオン自由度に対してこれを実現できる。これらの自由度と直接結合するプローブは既にNiu等が提唱しており、それを利用することで新規量子輸送現象への応用につながると考えられる。 2.熱流に対し同様の解析を行った。熱流に関するLuttingerによる線桂応答理論の定式化を援用することにより、熱量子ホール効果や熱輸送・電荷輸送間の交差効果は、場の理論の観点からは重力量子異常に由来することを明らかにした。(物理学会等で発表、論文準備中。) 3. 物質・材料研究機構の井上純一氏と共同で、通常絶縁体とトポロジカル絶縁体の間の光誘起相転移を起こす方法を理論的に解明した。トポロジカル絶縁体を実現する新しい指針を与え得る成果と考えている。(Physical Review Letter誌に投稿中。)
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