凝縮系の光励起ダイナミクスシミュレーションに向けて今年度は時間依存密度汎関数理論ベースの励起状態計算手法の妥当性検討を行い、以下のような成果を得た。 1:光励起電子-原子核ダイナミクスに対して有効と考えられる平面波基底を採用した時間依存密度汎関数理論実時間発展形式の有効性・計算精度の実証を目的にアゾ分子系の光解離反応の一つであるジアゾメタンからのカルベン分子生成反応を題材にそのメカニズムを考察した。この結果第一励起状態を主とする反応経路の存在可能性を提案し、実験と整合する結果を得た。既に本計算手法が励起状態の分子振動数やポテンシャル面を精度よく記述することの実証も行っており、これらの結果は本計算手法の励起ダイナミクスへの有効性を示すものなっている。 2:凝縮系の光吸収においては局在した電子状態(軌道)と広がった電子状態(軌道)の間の光励起を取り扱う必要がある。しかしこのようなタイプの励起エネルギーは多くの場合過小評価されることが多くその定量性向上が重要な問題となっている。この問題を解消すべく最近時間依存密度汎関数法の修正線形応答スキームが提案された。その有効性を確認すべく原子系のRydberg励起に対して解析を行った。その結果励起初期状態の準備に若干工夫が必要ではあるものの概ね局在-非局在状態間励起の記述がうまくできることを確認した。 以上からダイナミクス、凝縮系への取り扱いに関する必要事項の有効な知見を得ることが出来た。
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