研究概要 |
本研究は、電子Cold Collisionにより発現する量子効果の観測を目指した、高品位の超低エネルギー電子ビーム生成法の開発と、電子Cold Collisionの角度微分断面積測定手法の開発が目的である。平成20年度は、平成18年度に採択された科学研究費補助金(基盤研究(C)),Cold Collision電子分光法の確立)により開発した、「しきい光電子を電子源とする電子ビーム生成法」の改良を行い、その性能を飛躍的に向上させることに成功した。すなわち、しきい光電子を生成する「光イオン化セル」を新たに開発し、また電子レンズ系を改良することで、電子ビームエネルギーの最下限値を室温よりも低いエネルギー(〜20meV)まで下げることに成功した。また、電子ビーム強度も大幅に向上させることに成功した。改良した、超低エネルギー電子ビーム生成装置を高エネルギー加速器研究機構・放射光科学研究施設(KEK-PF)に持ち込み、希ガス原子(Kr,Xe)の電子衝突全断面積を20meV〜10eVまでの広い範囲にわたって、従来の報告例に無い高い分解能で測定することに成功した。また、この測定により、全断面積に現れるFeshbach共鳴による構造をはじめて精確に観測することに成功した。この構造の幅から、電子ビームのエネルギー幅を見積もるとともに、従来の理論から予測される結果との比較も行った。成果は学会等で発表した。
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