研究課題
本研究は本来宇宙論の分野で提唱されたキッブル・ズレック機構を原子気体のボース・アインシュタイン凝縮体の磁化過程に適用し新しい現象を見出すことを目的としている。今年度の研究では、動的カシミール効果とキッブル・ズレック機構の関係が明らかになった。動的カシミール効果とは本来共振器の壁等を振動させることで光子が生成される現象を指すが、それと類似の機構によって磁場を振動させることでボース・アインシュタイン凝縮体にマグノンが生成されることを明らかにした。さらにマグノンはマクロな磁化となりキッブル・ズレック機構によってスピン渦が生成されることを見出した。スピンを持つボース・アインシュタイン凝縮体には、様々な種類のスピン渦が存在する。本研究では、それらの渦がキッブル・ズレック機構で生成されるかどうかを示すことも目的の一つである。そこで、これまでのpolar-core vortexと呼ばれる渦に加えて、half-quantum vortexと呼ばれる渦に関して予備的な研究を行った。今年度の研究では、系を回転させてhalf-quantum vortexを生成する方法を新しく提案し、さらにその状態が磁化するとき、自発的に対称性を破って磁区パターンが形成されることを明らかにした。その他に、今年度は強い双極子相互作用を持つ原子のボース・アインシュタイン凝縮体が双極子相互作用によって崩壊するダイナミクスを研究した。この研究はシュトゥットガルト大の実験グループとの国際的な共同研究であり、理論的な立場から実験結果を非常に良く説明することに成功した。
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