平成20年度の繰越しにより、今年度、光格子中の3成分内部自由度を持つ冷却フェルミ原子気体の基底状態を動的平均場理論により調べた。斥力相互作用をする系のハーフフィリィングを調べた結果、3成分原子間の斥力の異方性に依存して、基底状態にはカラー密度波状態と、カラー反強磁性状態が現れることを明らかにした。前者は3成分のうち最も斥力が弱い2成分原子がペアを組み、ペア原子と他の原子とが交互に光格子に局在した秩序状態で、後者は最も斥力が強い2成分原子が交互に光格子に局在し、他の原子は系を遍歴している状態である。斥力の異方性を変化させると、SU(3)対称な等方的相互作用の場合に2状態のエネルギーは交差することから、異方性の変化に伴い二つの秩序状態は等方的相互作用の点で1次相転移し、そこではカラー密度波とカラー反強磁性状態が縮退していることを明らかにした。また、この量子相転移を記述する有効モデルはFalicov-Kimballモデルと等価であることを示した。Falicov-Kimballモデルのハーフフィリングにおける基底状態は密度波状態なので、ここで得られた結果と矛盾しない。以上の結果は^<173>Ybにおいて観測が期待される。 我々はまた、光格子中の引力相互作用をする2成分冷却フェルミ原子系の基底状態を、閉じ込めポテンシャルの効果を取り入れて調べた。動的平均場理論を実空間での取り扱いが出来るように拡張して計算した結果、閉じ込めポテンシャル中心からの距離に依存して、バンド絶縁体、超流動状態、原子密度波状態が現れるとともに、超流動状態、原子密度波状態の境界領域に両状態の共存状態である、スーパーソリッド状態が現れることを示した。
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