研究課題/領域番号 |
20540394
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
長谷川 正之 岩手大学, 工学部, 特任教授 (00052845)
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研究分担者 |
西館 数芽 岩手大学, 工学研究科, 准教授 (90250638)
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キーワード | カーボンナノチューブ / グラフェン / 電荷移動 / 断面変形 / ドーピング / 第一原理電子構造計算 / 金属表面 / 吸着 |
研究概要 |
カーボンナノチューブの断面変形とその安定性、断面変形に伴う電子転移の様相を明らかにした。また、新たに開発した現象論及び第一原理電子構造計算の手法を用いて、金属表面に吸着したカーボンナノチューブとグラファイトの単一層(グラフェン)における電荷移動の微視的機構を解明した。さらに、これらの現象を利用したナノデバイスの実現可能性についての検討も行った。 単層カーボンナノチューブの変形安定性と電子物性については、ある程度(2.1ナノメートル)以上の直径をもつ太いナノチューブは変形したまま実際に安定化されること、金属的なナノチューブもこのような変形によって半導体的になることを見出した。また、種々の金属表面に吸着したカーボンナノチューブおよびグラフェンの電荷移動についての現象論を展開した。この現象論を用いると、電荷移動の様相は、金属基板と吸着体の仕事関数の差と反発力、吸着体の電子状態密度を使って完全に予測可能である。実際に予測された電荷移動のタイプ(p型またはn型)とそのレベルは、カーボンナノチューブに対する実験結果、およびグラフェンに対する第一原理計算の結果とよく一致する。さらに、仕事関数の差の関数としての電荷移動の振舞いは、カーボンナノチューブとグラフェンでは定性的に異なること、それはお互いに異なる特異な電子状態密度に起因していることを明らかにした。ナノ構造体に関する殆どの実験および工学的応用では基板の使用が避けられないが、その基板が吸着体の電子物性に及ぼす影響の評価が本研究によって可能となり、それは基板選択における有用な指針を与えると期待される。
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