研究課題
蛋白質フォールディング機構に対する理論的なアプローチとして、解析的モデルの構築を目的として研究を行った。蛋白質のトポロジカルな情報をなるべく平均化せずに考えるため、天然状態においてコンタクトをおこす残基対間に相互作用が働いているランダム鎖をモデルとして用いた。計算結果をGoモデルシミュレーションと比較するため、残基間の結合エネルギーは一定としたうえで、エントロピーのフォールディングに伴う変化に対する評価をどのように行うかに焦点を当てた。このモデルを用いることにより、フォールディングにおける蛋白質のトポロジカルな性質の役割について考えることができる。まず、側鎖による残基間の結合距離、及び引力ポテンシャルの幅をパラメーターとして導入し、βシート型のペプチドについて定式化を行い、内部エネルギー、エントロピー、比熱についての温度依存性のプロットを行ったが、高温領域におけるエントロピーの温度依存性や比熱曲線をGoモデルシミュレーションの結果と比べた結果、蛋白質の共同的な振る舞いの効果を導入する必要があることがわかった。そこで、ランダム鎖を用いたモデルに更にすべての残基間に働く斥力の効果もとりいれたモデルを導入し、新たに計算を行った。これは、エントロピーに対して、蛋白質の共同的な振る舞いの効果を入れることになる。斥力のない場合においては、変数変換を行なうことにより各残基についての角度積分が解析的に遂行できたが、斥力をいれた系では行なうことが出来ないため、10残基前後のヘリックスやβシートについて、数値計算を使って分配関数を求めた。得られた結果から、フォールドした際の蛋白質のトポロジカルな情報と熱力学関数の温度依存性の関係を調べ、シミュレーションでも同様に傾向が得られることを確認した。
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Proc. of the International Symposium on Frontiers of Computational Science 2009 (FCS2009), ed. by Y. Kaneda, M. Sasai, and Kanta Tachibana (CD-ROM)(ISBN : 978-4-9904336-0-4)
ページ: 95-101