蛋白質フォールディング機構に対するアプローチとして、解析的モデルの構築を目的として研究を行った。蛋白質のトポロジカルな情報をなるべく平均化せずに考えるため、天然状態においてコンタクトをおこす残基対間に相互作用が働いているランダム鎖をモデルとして用いた。計算結果をGoモデルシミュレーションと比較するため、残基間の結合エネルギーは一定とし、蛋白質フォールディングにおけるコンフォメーショナルエントロピーの評価に焦点をあてた。このモデルを用いることにより、フォールディングにおける蛋白質のトポロジカルな性質の役割について考えることができる。残基間の結合距離、及び引力ポテンシャルの幅、斥力の半径をパラメーターとして導入し、ヘリックスやβヘアピンを含む小さなペプチドについて適用することにより、定式化を行った。分配関数の形は結合エネルギーに関する因子の多項式となり、その係数はトポロジカルな情報を含んだものである。係数部分は積分の形で表されており、斥力がない場合のβヘアピン型のペプチドなど特殊な例を除くと解析的に積分を行なうことができない。このため、数値積分を用いて係数部分は評価した。 天然状態でコンタクトをしている残基対に対し、実際にコンタクトをしている割合をオーダーパラメーターとし、自由エネルギー、エントロピー、各残基対に対してコンタクトを形成している確率をこのオーダーパラメーターの関数として調べた。その結果、フォールディングのメカニズムについて、コンタクトマップの他に斥力も重要な役割をなすことを示した。斥力のフォールディングのメカニズムに対する影響は、CI2に対するGoモデルシミュレーションにおいても見ることができ、解析的モデルがシミュレーションで現れる結果を理解するうえでのサポートとなりうることを示した。
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