2年目の平成21年度は、Gay-Berne(GB)モデルを用いた分子動力学法により、圧力変化によってネマティック相での分子1個あたりの体積、つまり、自由体積の変化が分子の回転緩和現象にどのように影響を与えるかについて検討した。特にここでは、圧力変化による議論をより正確にするため、ほぼ一定の配向秩序度(0.7)を有するネマティック相に注目してデータを集積し解析を行った。まず、このモデルの場合、系の圧力と自由体積(剛体の回転楕円体を仮定)の関係は、圧力が増すほど自由体積は減少し、それは2次関数的である。しかし、密度変化と自由体積の変化は線形的な関係を持っている。2次の回転緩和時間(τ2)は自由体積に比例し、回転粘性係数(指数表示)は自由体積に反比例することが分かった。また回転の拡散係数については、自由体積の変化によらず、ほぼ一定値を持つ。分子形状の変化による回転緩和現象の比較によって、このポテンシャルモデルの分子回転運動緩和の特性を知るため、自由体積に注目した場合の詳細な比較を現在行っている。特にここでは、等方相も含めたいくつかの配向秩序度での解析を行っている。これらの結果については、まとまり次第、学会および論文発表にて公表する予定である。また、もう一つのモデルポテンシャルであるsimple cylindrical modelでのシミュレーションによって、ネマティックー等方相転移点近傍での分子形状と圧力変化の双方を考慮して、分子動力学へ与える影響について議論をするため、基礎データの集積を開始した。
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