研究概要 |
1) Src SH3およびその突然変異体A45Gについて,フォールディング初期事象として現れる遷移中間体(TI)のpH依存性をX線溶液散乱で調べた。得られた中間体の慣性半径,ゼロ角強度は,A45Gの酸性領域で得られる平衡中間体(EI)が遷移中間体(TI)と同じで,遷移中間体は,-28℃でもストップトフロー装置の不感時間(6ms)に形成されることを証明した。 2) 中性領域では,他のSH3ファミリーと同様にβ構造を主に取るPI3K SH3の株を置塩博士から入手し,精製。X線溶液散乱の実験を行った。PI3K SH3は, pH3.5付近でアミロイド線維を形成すること,pH3以下でpre molten globule状態を取ることが知られている。X線溶液散乱の結果は,現在解析の途上であるが,中性でもコンパクトな形をとっていないことが示唆された。蛋白質の精製条件にもよると見られ,現在精製法を含めて,検討を重ねている。 3) Src SH3,ウシβラクトグロブリン,ウマβラクトグロブリンの3種が取るαヘリックスの多い中間体の関係を組織的に調べた。ウマ及びウシのベータラクトグロブリンは,過剰のエチレングリコール存在下で(ウシで80%以上,ウマで70%以上)αヘリックスの多い異性体を取る。この状態は,コンパクトではないが,慣性半径は変性状態よりは小さい値を取る。TFE存在下でできる異性体も同様の異性体と思われる。しかし,この異性体は,蛋白質が折りたたまれるときの初期に現れる遷移中間体とは異なることが明らかになった。 以上の研究は,引き続き21年度も継続して研究を続ける予定である。
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