2010年2月27日にチリ中部で発生したモーメントマグニチュード8.8の大地震に関して、GRACEによる衛星重力データを用いて、地震時の重力変化を検出した。その成果は米国の地球物理学速報誌Geophys.Res.Lett.に掲載された。地震に伴う重力変化を衛星で観測したのは、2004年12月のスマトラ・アンダマン地震に続いて世界で二例目である。重力変化は最大で5μガル程度であり、既存の地震時重力変化計算プログラムには海洋地域では地殻と海水の密度差を考慮する必要があることが明らかにされた。なおスマトラ・アンダマン地震で初めて発見された地震後変動がチリ地震でも見られるかどうかについては現時点でまだ明らかになっていない。 降水量の時間変化に由来する重力の二次関数的な時間変化の世界分布を求め、その起源を明らかにした。特に、東欧やアフリカ大陸の最近十年の重力変化にはこの成分を考慮すべきことがわかった。この成果は欧州の専門誌Geophys.J.Int.に論文掲載された。 いずれの例でも、GRACEによる季節的および経年的な重力変化は、そのかなりの部分が陸水モデルで説明可能であることがわかった。同時に、そのモデルに含まれない雪氷や湖水の質量変動がGRACEのデータには有意に含まれることが明らかになった。地震時重力変化を推定する際に、陸水変動によるノイズをどのように除去すべきかに関して、アメリカ合衆国ネバダ大学リノ校で開催された国際シンポジウムにおいて招待講演を行った。
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