周期1秒以下の短周期地震の伝播を強く支配し、地震波の減衰や地震波形の複雑化に大きく影響する、スケールが数km以下の短波長不均質構造の分布特性とその地域性を、日本列島に高密度に展開された地震観測網記録(Hi-net)の地震波形解析より評価した。 本年度は、地震波散乱により生じるP波初動のTransverse(T)成分への漏の強度に着目して、T成分へのエネルギー分配(EP)の距離減衰特性と周波数特性を地殻内で発生した浅い地震約30個について調査した。その結果、震源距離100kmまではEPは0.1~0.2程度の一定の値を持ち、周波数が高くなるほどこの値が大きいことがわかった。そして震源距離が150kmを超えるとEP値が徐々に大きくなり始め、震源距離250km以上で最終的に3成分のエネルギー比が等しく(EP=0.33)なる傾向が確認された。このような震源距離150km前後の散乱特性の変化は、近距離では直接P波が卓越し、震源距離150km以上では屈折波(Pn)が現れるためであると考えられる。 次に、観測データを説明することのできる短波長不均質構造モデルを作成し、地球シミュレータを用いて地震波伝播の大規模数値シミュレーションを行って、観測データ解析と同じ手法でデータ解析を進め、観測とシミュレーションとの比較検証を行なった。こうして、最終的に短波長不均質構造のモデルとして、相関距離がa=5km、揺らぎの強度が7%程度の大きさを持つ、Von Karman型の自己相関関数が選定された。
|