研究概要 |
地震発生前の準静的すべり過程の違いが地震の応力降下量に及ぼす影響をシミュレーションにより調べた.プレート内地震の応力降下量はプレート境界地震よりも大きいことが知られているが,その原因についてはわかっていなかった.プレート内地震では,断層全体が固着しているために,地震発生前にはほぼ一様に応力が増大するのにたいして,プレート境界地震では,アスペリティ周囲の非地震性すべりのためにアスペリティと非地震性すべり域の境界領域に応力集中が生じて,アスペリティ内の応力は一様にはならない.この結果,プレート内地震とプレート境界地震とで応力降下量が異なることが定量的に説明できた.また,短周期源の運動学的考察を進めると同時に,動的破壊過程のためのツールの開発を行った.これはMiyatake and Kimura(2006)で提案された2次元差分法による断層のモデル化を3次元化したものである.これを用いてDay et al(2005)のベンチマークテストを行い良好な結果を得た.このツールは平成22年度実施予定の動的シミュレーションに使用する予定である.さらに,短周期エンベロープインバージョン解析を行い,2008年岩手宮城内陸地震の震源断層面における地震波エネルギー放射量分布を推定した.その結果,破壊開始点付近,北北東深部,南南西浅部,南南西深部の4箇所で短周期エネルギー放射が強いことが明らかになった.また,これらの位置と,既往の長周期波形インバージョン解析による断層すべり量分布と比較すると,互いの位置関係は必ずしも相補的ではなく,複雑であることが分かった.さらに,断層面全体からのエネルギー放射量は,マグニチュード7程度の内陸地震としては標準的であることも分かった.
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