研究課題
研究の最終年度にあたる本年度においては、主に、関東平野に展開されている首都圏強震動総合ネットワーク(SK-net)や新たに構築されつつある首都圏地震観測網(MeSO-net)などで得られた波形データを地震波干渉法にもとづいて解析し、関東平野の大深度地盤構造を推定した。この他の研究も含めて、今年度の主な研究成果について以下にまとめる。・地震波干渉法の利用にあたって表面波の寄与について考察するため、2次元等方散乱媒質を仮定して、点震源から等方的に輻射されたP波及びS波のエネルギーの時空間分布をエネルギー輻射伝達理論にもとづいて定式化した。この定式化により、多重散乱の効果を厳密に考慮して、異なるモードの地震波のエネルギー平衡状態への遷移過程をより簡便に評価できるようになった。・地震波干渉法をSK-net及びMeSO-netなどで得られた地震波形データに適用して、隣接した観測点における地盤の応答関数を同時に求めることにより、関東平野内の複数の測線について疑似反射断面を合成することに成功した。このことで、反射法地震探査が実施されていない地域においても、大深度地盤構造を水平空間分解能2~3km程度で正確に把握できるようになった。・関東平野内の750地点において地盤構造を推定した。地震基盤の深度は、場所によっては4kmを超えるなど、地域によって大きく変化することが明らかになった。この結果は、従来の研究報告と大局的には整合するものであったが、東京都の中央部からほぼ北方向に連続する地震基盤の陥没など、水平方向に十km程度のスケールで堆積層及び地震基盤の構造が局所的に変化する様子がより明瞭に確認された。
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