研究概要 |
前年度に引き続き、実施したマリアナトラフ北緯17度付近調査航海で得られた各種類の深海調査データについて、データ個別に分析・解析を進めた。潜水船地質観察により、海底溶岩流形態の分類と溶岩流形態の地域変化を調べた。また潜水船観察によるグラウンド・トゥルースを得たことによって、過去研究で得ていたサイドスキャンソナー画像から推定した地質、テクトニクスの議論の確度を高めることができた。潜水船を用いた海底サブボトム・プロファイラー観測から、溶岩流の上に載った薄い表層堆積層厚を調べた。堆積層厚の差によって溶岩流の相対的な年代差(新旧関係)を推定した(共著学会発表2件)。岩石(玄武岩)試料に関しては、XRF,EPMAを用いた主成分・微量成分組成分析を行った。更に岩石磁気の分析を行った。また、潜水船での磁場観測データを解析し深海地磁気異常を求め、微細な海底磁化構造を調べた。成果の公表として、地磁気異常に関する研究成果をヨーロッパ地球科学連合(EGU)大会と日本惑星科学連合大会で発表した。各々の調査結果を総合させた議論については、観測事実が本研究申請当初に立てた作業仮説よりも複雑な事象であったために、現在も解釈を検討中である。初期的議論を、海洋研究開発機構主催のシンポジウムで発表した。今後、議論を深化させて論文化していきたい。本研究によって、背弧拡大軸における海洋地殻・リソスフェア形成過程の研究に資する詳細な観測事実を提出し、要素的研究について成果を挙げることができたことに意義を見出せる。学会発表の他、本研究で採取した岩石情報、化学分析値は、海洋研究開発機構が運用管理する岩石サンプルデータベースに公開した。また、潜水船を用いた深海地磁気観測で得られた知見を踏まえて、高分解能を最大限に生かした解析手法の探求を目指す挑戦的萌芽研究の申請につながった。
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