研究課題
1.研究内容研究の最終年度となる2010年度は、過去2年間にローヌ氷河で取得した観測データを用いて、湖形成による氷河後退メカニズムの解明に取り組んだ。流動速度、底面水圧、氷庫、融解量、気象、底面堆積層庫などのデータを解析するとともに、有限要素法を用いた流動数値モデル、氷河融解モデルなどを用いた数値実験を行った。研究活動は、北海道大学環境科学院大学院生、およびスイス連邦工科大学の協力を得て実施された。2.研究成果とその意義解析の結果、湖の形成によって氷河末端付近の流動速度が上昇し、著しい氷厚減少の原因となっていることが判明した。さらに、縮小した氷河末端が湖水の浮力によって持ち上がり、大規模に崩壊する過程の詳細が明らかになった。これらの成果は、湖形成→流動加速→伸長流による氷厚減少→末端の崩壊、という氷河後退プロセスを初めて明らかに示したものである。本研究によって得られた氷厚分布とその変化速度を勘案すると、湖はおよそ25年後まで拡大を続け、その全長は600mに達すると推定された。また掘削孔を使った氷河内部および底面での観測(底面すべり速度・底面水圧・氷の鉛直歪み・底面堆積物の厚さ)は、氷河底が湖と氷河の相互作用に重要な役割を果たしていることを示した。この結果は、氷河底面流動機構の解明に大きく寄与するものである。3.その他得られた研究成果を国内外の学会にて発表した他、査読つき英文誌に公表した。また博士課程大学院生の学位論文としてまとめられた。2010年9月、5回目となる国際南極大学(Ihternational Antarctic Institute)プログラムの大学院野外実習をスイスにて実施し、10名の大学院生がローヌ氷河での研究活動に参加した。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (7件) 備考 (2件)
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