本研究は対流圏下層の大気環境場と積雲の相互作用を明らかにすることを目的とする。具体的には、対流圏下層の大気環境場を規定した場合に、その場で発生・発達する積雲の特徴と発生した積雲の影響による大気環境場の変化を、観測結果と数値実験の結果から示すことで実現を目指す。昨年度は梅雨期の中国大陸上を想定して、湿潤な陸域を対象としたLarge Eddy Simulation(LES)を用いた数値実験を実施し、その結果を論文として取り纏めた。論文はJournal of the Atmospheric Sciencesに投稿したが、残念ながら受理されなかった。この研究成果については、現在、論文を改訂中であり、別のジャーナルに投稿することを検討している。 一方、熱帯(亜熱帯)海洋上を対象とした同種の実験も昨年度に引き続き実施中である。こちらはシミュレーション実験を行い、その結果を整理している段階である。さらに、数値実験の結果と比較するための観測データの整理も進めている。観測船により取得された雲レーダー、ライダー、シーロメータ(雲底計)、ラジオゾンデなどの観測データを整理し、数値実験の結果との比較を行うための観測データの整理を行っている。 今年度は本研究課題の最終年度である。改訂中の論文を再投稿するとともに、海上のケースについて観測結果と数値実験の結果の照合を行い、暖かい海上と湿潤な陸上における大気境界層・浅い積雲の構造について、最終的な研究成果の取り纏めを行なっていく予定である。
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