研究概要 |
本研究では,アンサンブル予報での初期摂動作成法の一種であるBGM(Breeding of Growing Mode)法を数値予報モデルなど適用して,熱帯大気循環に伴う惑星規模の有限振幅の不安定モードを抽出し,その時空間構造や基本場依存性を明らかにすることや,この不安定モードが中高緯度大気循環に及ぼす影響を評価することを目的としている.今年度は,気象庁1ヶ月予報モデルにBGM法を適用して得られた毎日の熱帯域初期擾乱を用いて,気象庁1ヶ月予報モデルによるアンサンブル予報実験を実施した.このアンサンブル予報実験の実施期間は,Madden-Julian Oscillation (MJO)が比較的活発であった2003年11月から2004年2月の4ヶ月間とし,この期間中,30日積分を毎日実施した.また,アンサンブルメンバー数は,初期摂動を含まないコントロールラン1メンバーと摂動ラン4メンバーの合計5メンバーとし,初期摂動の大きさは熱帯域における200hPaベクトルポテンシャルの気候学的変動量の10%とした.この予報実験結果を用いて,まず,熱帯域有限振幅不安定モードの線型的発達期間を,符号のみが異なる二つの初期摂動の時間発展を比較することにより求めた.その結果,線型発達期間は2日から3日程度であり,中高緯度域における初期摂動の典型的な線型発達期間と同程度であることがわかった.また,熱帯域初期摂動の時間発展に関する初期解析より,擾乱の非線型発達段階では,擾乱は停滞して発達する傾向にあることが示唆された.これは,Chikamoto et al. (2007)が示した線型段階での擾乱の特徴である,東西波数1の波動性擾乱が30m/sで東進するという傾向とは里なっている.
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