研究概要 |
2009年7月2日~8月6日の間に、今治市と大島の間の来島海峡(西水道と中水道を含む)の両岸に、3台の沿岸音響トモグラフィー装置を設置し、音響局間で周波数4kHzの音波を送受信し、音波の伝播時間を双方向で長期計測することにより海峡を通過する潮流の長期連続計測を実施した。そして、主要5分潮(M2,S2,K1,O1,M4)を考慮した調和解析を行い、潮流と残差流(平均流)成分を求めた。潮流の振幅は、M2,S2,K1,O1,M4の順で小さくなった。海峡を通過する方向の平均流速と通過断面積の積を取ることにより海峡通過流量を求めた。流量の潮流成分は小潮で±70,000[m^3/s]の範囲で変動し,大潮で±150,000[m^3/s]の範囲で変動した.また,残差流量は-14,000[m3^/s]となり西流となった.今回の実験では、かなり強い潮流による鉛直混合と表層の加熱作用により10m深の上下に音波の導波管が形成されていた。そのために、音波は0m~20m深の間を伝播した。そこで、海面下20m層の通過流量が計測されたと考えてよい。今回、来島海峡を通過する潮流流量を小潮から大潮に渡って連続計測できたことは、輻輳した船舶の通行下でも計測を実施できる本手法の適用によって初めて可能になったことである。残差流が西向きとなったことは、東流時に、大島の東側に形成される反時計回りの潮流渦が、西流の発生と共に西側に吹き流されることによるものと考えられる。本年の実験とデータ解析の結果、大潮、小潮の周期で来島海峡に発生する潮流と残差流の実態を解明できた。来年度は、本年度の解析結果を総合評価し、取りまとめることにより、主要な成果を社会に公表する。
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