研究課題
本研究の目的は、夏季に東シナ海から流入する大陸河川の影響を強く受けた低塩分水(長江希釈水)が、日本海の中でどのように拡散し、どのくらい遠方の海域にまで影響を与えるのかを、現場観測と既往観測資料の解析を通して明らかにすることである。1.現場観測昨年度に引き続き、対馬海峡から津軽海峡西部までの17測点で表層水温・塩分のモニタリングを実施した。本年度は新たに鳥取県沿岸(御来屋)と男鹿半島に測点を設けたが、佐渡と男鹿半島では観測機器のトラブルのため、データを取得できなかった。これまでに得られた3年度分の観測結果を解析したところ、最低塩分の現れる時期や最低塩分の値には顕著な経年変動が認められ、その原因として長江流量の多少や、風応力分布などの影響が考えられた。また、低塩分水の移流時間スケールは毎年ほぼ一定であり、対馬海峡から能登半島まで約1ヶ月、さらに津軽海峡まで約1ヶ月の合計2ヶ月程度であることがわかった。2.既往観測資料の解析石川県水産総合センターによる能登半島北西沖での観測資料(1971~2000年)を解析した。塩分データを精査したところ異常値が散見されたので、新規にデータセットを作成し、改めて塩分場の季節・経年変動を考察した。また、能登北西沖海域と対馬海峡の塩分偏差について特異値分解解析を行ったところ、第1特異成分として両海域で同位相で変動するモードが抽出された。また両海域の相関分布から、対馬海峡東水道東部から流入した低塩分水が、約1ヶ月かけて能登北西沖海域にまで移流され、能登半島沖の陸棚上および沖合上層の塩分を変動させていることがわかった。対馬海峡における第1特異成分は、長江流量の経年変動とよい相関を示す同海峡における塩分の経年変動の主要モード(EOF第1モード)と高い相関を示すことから、長江流量の変動に関連した塩分変動は、少なくとも能登北西沖海域にまで及んでいることが明らかとなった。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件)
Monitoring and Prediction of Marine and Atmospheric Environmental Change in the East Asia, Edited by T.Yanagi, TERRAPUB, Tokyo (ISBN978-88704-150-9)
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