研究概要 |
短波海洋レーダから波浪スペクトルを,インバージョンによって求める手法を開発した。短波海洋レーダから推定された波浪データと,現場観測及びモデルで予測された波浪データの相互比較を行った。中間周波数帯の波浪エネルギーは,低・高周波数帯のそれらよりも良く一致した。中間周波数帯は最もエネルギーの大きな周波数帯である。一方,波向きは高周波数帯で最も良く一致する。これは,高周波数帯の波向きは風向に最も近く,風向は一次散乱の比から求められるからである。レーダで求めた平均波高分布とモデル推算による平均波高分布も類似していた。また沖縄島東方沖における海洋レーダ流速ベクトル分布図から,その分類法に関する比較研究を行った。比較したのは自己組織化マップ(SOM)解析とクラスター法である。分類の結果,観測域東側で強い南向きの流れがあるパターンと,時計回りの渦のような流れがあるパターンとが示された。次に経験的直交関数(EOF)解析によって,データの次元を圧縮し,そのデータ分類への影響を調べた。流速ベクトル分布データをEOF上位モード番号で表現することにより,データの次元を圧縮する。そしてその打ち切りEOFモード番号の,データ分類への依存性を調べた。その結果,SOMによる分類は,クラスター法による分類に比べて,打ち切りEOFモード番号依存性が小さいことが示された。すなわちEOFによって,データ次元の圧縮或いはノイズの除去が必要な場合において,クラスター法では,その打ち切りEOFモードをどう設定するかが問題となる。一方,SOMでは,こうした問題はないことを示している。
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