研究課題
前年度までの現地観測を通じて取得したデータを解析して、ブータン・ヒマラヤにおける氷河縮小実測値をとりまとめ、学会発表するとともに、執筆論文も受理された(印刷中)。この論文は、ブータンの4氷河において反復実施した測量結果から縮小量を算出するとともに、その他の多数の小型氷河の縮小や氷河湖の拡大を示す比較写真もあわせて整理し公表するものである。これまでブータンにおける氷洞変動を定量的に示す研究例は極めて限られていることから、本論文の意義は大きいものと言える。また、測量対象としたうちの2氷河における縮小量および表面流速分布の差異は、本研究課題におけるフィードバック仮説を支持する内容となっている。一方、南米パタゴニア氷原ペリート・モレノ氷河における現地観測の解析成果が、国際的に高い評価を得ている学術雑誌上に、共著論文として発表された。この内容は、同氷河下流部における氷河底の水圧と氷河流動速度との高い相関を示しており、本研究課題におけるフィードバック仮説をも裏づけている。さらに同氷河末端部における氷崖の位置や流速と氷河前面湖の水位との関係についても解析を進めたが、年度内の論文完成までには至らなかった。近年のうちに論文として出版できるよう、引き続き解析、考察を進める予定である。さらに、研究成果の社会還元の一環として、産官学連携講演会における講演や専門分野の異なる学会での招待講演等を積極的に引き受けた。一般的にはあまり馴染みのない、氷河変動のメカニズムやその影響について分かりやすく紹介することで、地球環境問題をより具体的に考えて頂くための啓蒙となったと言えよう。
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Global Environmental research
巻: 16(in press)
Nature Geoscience
巻: Vol.4, No.9 ページ: 597-600
doi:10.1038/ngeo1218