これまでの山岳上昇実験結果をもとに、東アジアの気候とチベット高原の関わり、特に大陸移動と山岳上昇、山岳上昇による気候の変化、梅雨との関わり、についてとりまとめた。 大陸氷床の存在した最終終氷期極大期の気候再現実験のエネルギー論的解析を行った。その結果、最終終氷期極大期の大西洋域では、北米大陸氷床の山岳効果により、ジェットと非定常擾乱の順圧的な相互作用が強化されることがわかった。これは、太平洋域では擾乱とジェットとの相互作用が氷期ではむしろ弱まるのと対照的である。 対馬海峡の役割を調べるために海峡開閉実験を行った。対馬海峡は宗谷岬における水位の上昇を引き起こし、その結果、宗谷海峡における日本海からオホーツク海に向かう流れを強めてオホーツク海に冷水帯を形成するという役割を果たしていることが示された。 山岳・海峡地形の変遷による日本近海の北太平洋における海洋の塩分躍層の変化が、大気・海洋間の二酸化炭素交換量の変化にどの程度の影響を及ぼしていたのかを定量的に見積もった。その結果、混合層の塩分が高いと冬季鉛直対流混合がより深まるので、深層の高炭素水が海面に運ばれて大気と接するようになり、海洋から大気に大量の二酸化炭素を放出するようになることが分かった。
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