研究概要 |
台風の発生はまだ不明な点が多く,その進路や強度はある程度予測できるが,発生の予測はまだ困難であるのが現状である.本研究のねらいは,台風の発生を含むライフサイクルにおける不確定性を明らかにすることである.その手段としてアンサンブル手法を用いて作成された全球大気再解析データセットALERAを用いる.このデータセットの特長は,不確定性を示す解析誤差が解析アンサンブルスプレッドとして得られることである.平成21年度は,ALERAに現れる台風の特徴や解析アンサンブルスプレッドの構造や時間発展について詳しく調べた. ALERAに現れる台風の統計的な特徴をベストトラックデータや他の再解析データと比較して調べたところ,台風ボーガスデータを同化していないにも関わらず,台風の再現性が良いとされるJRA-25に遜色ないことが分かった,また,解析アンサンブルスプレッドの構造や時間発展について調べたところ,台風の発生など様々な現象に先行して解析アンサンブルスプレッドが増大する現象を見いだした(Enomoto et al. 2010, GRL,印刷中).台風が発生する以前から,高気圧の圏内で解析アンサンブルスプレッドが増大する例が多く見られた.これは,アンサンブルのメンバーによって台風を駆動する積雲対流の発言のタイミングや強さが前後することが原因と考えられる. さらに,2006年9月に延岡に竜巻をもたらした台風第13号に関し,ALERAから作成した初期条件を用いて実施したアンサンブル予測実験の結果を分析した.この台風は,数値実験の結果から本研究で着目している海面水温偏差の影響が大きいことが分かっている事例である.アンサンブル予測から台風の発達の鍵となる初期擾乱の分布を特定する感度解析を複数の手法を用いて行った.
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