研究概要 |
2006年9月に延岡に竜巻をもたらした台風第13号に関し,複数の解像度の海面水温データを用いたアンサンブル予測実験を行った.米国海洋大気局が作成した高解像度(1/2°)準リアルタイム日別海面水温データ(RTG SST)では,九州の東,四国の南に南北に伸びる暖水域がある.これに沿って対流の活発な降水バンドが形成され,その中で竜巻の親雲が発生した.低解像度(1°)週別海面水温データ(OISST)では,暖水域は十分に表現されていない.OISST気候値には,暖水域は存在しない. 台風が台湾付近にあった2006年9月15日12UTCから3種類の海面水温データを用いた予測実験を行った.高解像度海面水温データを用いると,九州接近時の台風の位置はやや北にずれる程度であるが,暖水域上で海面からの潜熱・顕熱フラックスを受け,下層の不安定性が強化された結果,顕著な対流性降水が見られた.これに対し,OISSTやその気候値データを用いた場合では,降水バンドが不明瞭であった. アンサンブル予測実験から海面水温データの違いによる気象場への影響を調べた.RTG SSTは,OISST及びその気候値と比較して,潜熱・顕熱フラックスが有意に大きい。対流性降水の差は,0ISST気候値に対しては有意であるが,OISSTに対しては九州東岸や四国南岸の一部のみに有意な差が得られた.以上から,台風の降水バンドの形成に高解像度海面水温データの重要性が明らかになった.
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