磁気圏境界や磁気圏内部に於いてはプラズマの圧力勾配が存在し、イオンの反磁性ドリフト速度が現れ、それが速度勾配を持つ場合には流体的な速度シアーによって駆動される不安定が起こる可能性がある。今までは磁場凍結が成立する理想電磁流体の方程式を使って速度シアーによる不安定が調べられてきたが、そのような方程式ではイオンの反磁性ドリフトの速度勾配による不安定は記述できない。そこで今年度は電子慣性を無視した一般化されたオームの法則を用いた非圧縮性の1流体方程式を使って、速度シアーと磁気シアーがある流れのある定常状態に対して磁場の擾乱に関する一般的な固有値方程式を導き出した。この一般的な固有値方程式は擾乱に関する4階の空間微分を含みイオンの0次の反磁性ドリフト速度も考慮されており、一様プラズマ中ではアルベン波とホイッスラー波の成分を含む。しかし一般的な場合の方程式は非常に複雑であり、そこで典型的なプラズマの不均一長に対するイオンの慣性長の比を微小パラメーターとして不均一なプラズマの場合に一般化された固有値方程式の近似式を求めた。最低次の近似でホイッスラーモード成分を無視すると固有値方程式は2階の微分方程式となり理想電磁流体の固有値方程式と似た形となる。しかし理想電磁流体の場合と異なり、0次の磁場と垂直方向の速度には電場ドリフトの他にイオンの反磁性ドリフトを含む。この簡略化された固有値方程式を用いてイオンの反磁性ドリフト速度の勾配によって駆動されるケルビン・ヘルムホルツ不安定に対する安定化のための十分条件を導き出した。この条件式を実験室プラズマで用いられる磁場構造に対して応用し、不安定に対する安定化の十分条件を導き出した。磁気圏のプラズマに対してもこの十分条件は適用できる。
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