研究課題/領域番号 |
20540436
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
三浦 彰 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教 (20126171)
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キーワード | 磁気圏・電離圏 / 宇宙空間 / 超高層物理学 / 磁気流体不安定性 / プラズマ・核融合 / エネルギー原理 / 交換型不安定 / バルーニング不安定 |
研究概要 |
本研究の主要な目的は磁気圏での磁気流体(MHD)不安定性、特に交換型不安定やバルーニング不安定の線型の範囲での完全な理解であり、23年度は以下のような成果が得られた。 (1)代表者が構築した磁気圏のエネルギー原理からオイラー・ラグランジュ方程式を使って、プラズマの変位の振幅の満たす、2階の固有値微分方程式が得られた。この方程式では周波数の二乗が固有値となり、不安定の成長率を求めることが可能になった。今まで磁気圏の交換型不安定については、成長率はもとめられておらず、本成果は交換型不安定と磁気圏の諸物理現象のタイムスケールを比べる上で有用である。 (2)代表者は磁気圏のエネルギー原理を電離層下部の中性大気まで含む形に拡張したが、その原理構築においては絶縁体中でポテンシャルがゼロというゲージを使っていた。23年度は、この構築は絶縁体中でベクトルポテンシャルの磁場成分がゼロというMHDゲージを使っても可能であることがわかり、拡張された磁気圏のエネルギー原理が確かめられた。 (3)圧力駆動不安定は運動論的には湾曲した磁力線に沿ってバウンス運動するイオンに働く遠心力が見かけ上の重力になって駆動されることが知られており、見かけ上の重力は磁力線の曲率に比例する。しかしこの説明においては、電流がゼロで圧力勾配もないプラズマが仮定されている。そこで23年度は圧力平衡が∇p=J×Bの形で決まる一般的な場合にも適用できる見かけ上の重力の表式を導出した。この中には曲率だけでなく圧力勾配も入り、電子の圧力の無視できる磁気圏で見かけ上の重力が地球向きになる予想外の可能性も示す。また一本の磁力線上では、この一般的な見かけ上の重力と粒子の案内中心による電流J_<gc>によるJ_<gc>×Bがつりあい0次の平衡が保たれていることがわかり、磁気圏のプラズマの力のバランスの微視的な解釈が可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主要な目標である非回転の磁気圏については研究の目的はかなり達成されたが、回転する磁気圏の場合の考察がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
23年度に得られた成果の取りまとめを行う。磁気圏の交換型不安定性について典型的パラメーターに対して成長率を求める。回転する磁気圏の場合には自己共役性が成り立たず安定性のための必要十分条件を与えるエネルギー原理は存在しないことが知られており、安定性の十分条件だけについて考察を進める。
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