研究概要 |
本年度は、本研究課題によりその存在が示された電離層駆動交換型不安定(Miura, 2009)の論文に定量的な誤りが見つかり、その修正をすると共に磁気圏のエネルギー原理と電離層駆動の不安定についてより深い知見を得た。主な実績結果を以下に示す。 (1) アイコナール近似を用いダイポール磁場中で磁力線に沿って任意の点での波数ベクトルの一般的表式を得た。波数ベクトルは経度方向のみならず緯度方向成分も含む。磁力線に沿って赤道面と電離層での波数の比を、赤道面内で地球中心から磁力線までの距離を地球半径で割ったL値の関数として表す一般的表式を得た。経度方向の波数が無限大の極限(経度方位モード数mが無限大)では電離層での経度方向の波数は赤道面でのLの3/2乗倍となることがわかった。例えば、L=1ではその比は1でL=10では31.6となり、赤道面内での比の10よりかなり大きい。このような波数の比は磁力線が閉じた磁気圏内での波動・不安定を考える上で重要なパラメーターだが、ダイポール磁場の場合でさえ、その正確な比の値は計算されてこなかった。 (2) 2009年の論文では、波数の2乗に比例する電離層面でのエネルギー積分への表面積分の寄与を赤道面での波数を用いて計算していたため、上記の比を1としてダイポール磁場で電離層駆動の寄与をLの3乗分の1倍(L=10では1000分の1倍)過小評価していた。この誤りのため、2009年の計算ではm=2までのモードしか不安定とならなかったが、修正の結果m=38(電離層での東西方向の波長がほぼ500km)までのモードが電離駆動効果により不安定となることが判明した。このような大きなmのモードは圧力駆動の交換型不安定で励起されると考えるのが通例だが、電離層駆動でも不安定化されうることが示された。 以上の結果は年度内に投稿され2013年のCorrectionの論文で発表された。
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