研究概要 |
地球の電離圏では数時間に一度、オーロラが爆発的に発達する。このオーロラ爆発に関連した、電離圏・磁気圏における一連のエネルギー解放現象は、包括的にサブストームと呼ばれる。本研究ではサブストームを理解するために、主としてテミス計画取得の地上・衛星観測データを用いた総合解析を行う。特に、地磁気逆計算法により電離圏の状態を再現し、サブストーム開始時のオーロラ電流系は東西ループであるか、南北ループであるかを明らかにする。本年度は、テミス衛星群と地上オーロラビデオとによる2008年3月1日のサブストーム同時観測について、解析を行った。テミス衛星群が真夜中前に滞在していた2008年3月1日に、カナダのFort Smith (67 MLAT, 22.5 MLT at 0650 UT)において、オーロラの白黒ビデオ観測(sampling rate: 30 Hz)を行った。特に0647 UTに生じたpseudo-breakupを調べた。まず、赤道側に移動していたオーロラアークが、0640 UTに消失した。その場所で6分後、弱いオーロラの増光が0646:28 UTに観測され、続いてpseudo-breakupが0647:27 UTに開始した。このpseudo-breakupが0648 UT頃に消失すると同時に、西側から明るいオーロラのパッチが東側に移動してきて、ローカルなオーロラ爆発に発達することが観測された。一方、0647:27 UTのpseudo-breakupの2分前(0645 UT)に、磁気圏尾部に滞在していたテミス衛星B(GSM-X, Y, Z= -20, 4, -2 Re)では、磁場が南向きに変わり、spikyなtailward flow (~100km/s)を観測した。その後0646 UTには、テミス衛星E(GSM-X, Y, Z= -11, 4, -2 Re)とテミス衛星D(GSM-X, Y, Z= -11, 3, -2 Re)がearthward flow (200 km/s, 50 km/s)を観測し、テミス衛星A(GSM-X, Y, Z= -7, 5, -2 Re)は磁場の双極化を観測した。これらの地上オーロラ観測と衛星プラズマ・磁場観測の時間差から、0647:27UTのpseudo-breakupに対応する磁気圏尾部の磁気リコネクションは、pseudo-breakupの約2分前に生じたと考えられる。
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