地球の電離圏では数時間に一度、オーロラが爆発的に発達する。このオーロラ爆発に関連した、電離圏・磁気圏における一連のエネルギー解放現象は、包括的にサブストームと呼ばれる。本研究ではサブストームを理解するために、主としてテミス計画取得の地上・衛星観測データを用いた総合解析を行う。特に、地磁気逆計算法により電離圏の状態を再現し、サブストーム開始時のオーロラ電流系は東西ループであるか、南北ループであるかを明らかにする。本年度は、地磁気逆計算法の検証を行った。極域電離圏(高度100km)におけるオーロラは、より高々度の磁気圏と、磁力線に沿った電流を通じて結合している。この電流(沿磁力線電流)は、二つの異なる手法を用いて別々に研究されてきた。一つは極軌道の衛星による直接観測であり、電流分布が単純な場合は、ほぼ正しい電流値が定まる。ただし、観測は軌道線上に限られるため、面での電流分布については、統計値しか得られない。もう一つは地上の磁場データを用いた地磁気逆計算法であり、間接的ではあるが、面でのスナップショットの推定が可能である。本研究では、地磁気逆計算法によって推定した沿磁力線電流と、直接観測を比較した。その結果、沿磁力線電流が比較的単純な二層構造であった二例では、地磁気逆計算法はこの構造を定性的に再現し、定量的には30-60%過小評価した。一方、沿磁力線電流が複雑な四層的構造であった一例では、地磁気逆計算法は、内部の二層を定性的にも再現できなかった。
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