地球の電離圏では数時間に一度、オーロラが爆発的に発達する。このオーロラ爆発に関連した、電離圏・磁気圏における一連のエネルギー解放現象は、包括的にサブストームと呼ばれる。本研究ではサブストームを理解するために、地上・衛星観測データを用いた総合解析を行う。特に、地磁気逆計算法により電離圏の状態を再現し、サブストーム開始時のオーロラ電流系は東西ループであるか、南北ループであるかを明らかにする。 本年度は、実際に地磁気逆計算法を用いた解析を行った。オーロラ爆発上空では、磁力線に沿った電流(沿磁力線電流)が観測される。この沿磁力線電流が、東西電流ペアであるのか、南北ペアであるのか、あるいは両者の競合であるのかを明らにすることが、電流系の駆動源を理解するために重要である。本研究では、地磁気データとオーロラデータを用いた地磁気逆計算法により、沿磁力線電流を面でスナップショット推定し、その成分を分解した。地磁気データは、全世界の150点の観測所による1分値を用いた。オーロラデータは、ポーラー衛星による二波長紫外線観測を用いた。解析の結果、西向きジェット電流の南北で、推定した沿磁力線電流の、ホール成分とペダーセン成分が反相関していた。この結果は、東西ループ電流に関係した電場が、南北方向の分極電場を生成したこと、すなわち「ホール効果」により、南北電流ループは生成が阻止されて東西電流ループが強められていることを示唆している。
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