研究概要 |
本研究は火山に含まれる石英単粒子の蛍光から年代測定を実現することを目的としている。用いる赤色蛍光は, 300度以上の高温で出現するため, ヒーターから放出される赤外線と石英の赤蛍光を分離する技術的な困難性がある。加えて, 石英単粒子からの蛍光は微弱であるため, 測定装置は優れた検出感度が要求される。そのため本研究遂行のため現有の赤色蛍光測定装置の格段の高感度化を進めた。装置改修では, 赤外線励起ユニットの組み込み, ヒーター部の強化(ワットロー社製に交換), ITL(恒温熱蛍光)測定を行うための改修などを施した。また, プログラムについてもSAR自動測定が行える変更を進めた。また, 特に短時間の信号検出(測定1ゲート時間, 100ミリ秒対応)の信号検出を行えるようにした。改修の結果, 赤色蛍光測定装置として, 検出感度は世界トップ水準に達した。基礎実験は, 測定可能な線量の最低限界試験を行い, 石英単粒子では約10Gy程度であることが示された。これは平均的な年間線量(1-2mGy/a)を採用すれば, 5000年から10000年に相当する。また,ITL測定法の手法についても検討し,TL測定と同様なバック測定を行い,最初の測定との差分から石英固有のITLカーブ検出をする方法を考案した。ITL測定法では高温測定(390あるいは410℃)を進め, 石英(洞爺火砕流)単粒子年代測定をSAR(単分画再現)法により試みた。得られた年代は100-126kaを示し, この年代は期待年代112-115kaと誤差内でよく一致した。この結果, ITL法により, 石英単粒子による年代測定に世界で始めて成功した。ITLは測定当初に強いシグナルを放出し, これを用いてより信頼度の高い測定が行えることが判明した。線量応答性は高く, 感度変化も小さく, 年代測定に優れた手法であると予想される。今後, さらに応用実験を行う予定である。
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