エクストルージョンウェッジの北側を中心に、背斜を確認した。しかし、構造は非対称で、エクストルージョンは背斜軸の北翼には対応しない。ここには、かわりに種々の変成帯からなるデュープレックスがアウトオブシークエンススラストの上盤に生じている。これらが、所詮、中央構造線からエクストルードした三波川高圧変成岩のエクスヒューム時の大構造である。なお、これらから、横臥褶曲は存在し得ない。アウトオブシークエンススラストの下盤はLテクトナイトを除いた緑泥石帯で、アウトオブシークエンススラストの影響で、乱雑に破壊されているのが特徴である。さらに下盤には大歩危砂質片岩があるが、これは実は2階建てで、2層準に発達することを確認した。大歩危砂質片岩のうち、構造的下位側の片岩は背斜に参加しているが、構造的上位の砂質片岩は背斜の北翼のみに存在している。 一方、薄片はほぼ作成でき、鏡下観察、また鉱物のEPMA分析から、三波川変成作用は、超塩基性岩の定置以降に起こったことが明らかになった。このことは、超塩基性岩がメランジェプロセスで定置したというより、堆積性岩塊である可能性が強いことを、現時点で示している。つまり、残念ながら、震源断層の化石としての見込みは薄くなっている。 石垣島の超塩基性岩も、岩相上の見かけも含めて、三波川帯のそれと類似している。一方、レリックでチタンオージャイトを確認した。これにグロコーフェンが重複して生じている。
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