地震性すべり(固着すべり)に伴う断層面近傍のダメージを評価するために、すべりの表面を研磨した石英単結晶を高封圧下ですべらせる実験を行った。120MPa-180MPaの封圧条件下の固着すべりで断層面近傍に発生する残留応力を評価するために、回収試料に対してEBSDパターンを利用した格子歪測定法を適用した。これまで封圧150MPaおよび180MPaの実験試料の測定を行い、歪測定が可能な明瞭なEBSDパターンが取得できた。22年度は、2次元測定を行い断層面近傍の歪分布を明らかにする予定である。 サンアンドレアス断層などの巨大な断層帯では、すべり面の周りに広く発達するせん断構造を伴わない粉砕岩が報告されている。これらは、超音速のラプチャースピードを伴う断層運動の波によって形成されたと考えられている。すべり挙動と破壊構造の関連を明らかにするために、本実験の回収試料の破壊構造観察と力学データ解析を行っている。封圧160Mpa未満の実験では、クリープを起こしながら多段階に比較的小さな固着すべりが発生し、すべり面上にメルト層が発達したり、粉体状の破砕物が見れたが、顕著な破壊は起こらなかった。一方、封圧180MPaの実験では、大きな固着すべりが発生し、試料は大きく破壊した。どの試料もせん断面から数mm以上の深さまで細かく粉砕したが、せん断破壊の証拠は認められなかった。TEMによる破砕物質の観察では、数μm程度の細粒物質が多数見られた。破壊面の進展速度を求め、試料を破壊に至らしめた波の振幅を求めるためには、歪計の感度調整とサンプリングレートの倍増などのサンプリング条件のさらなる改良が必要である。22年度の実験では、これらの点を改善した実験によって、有効な力学データが取得できる見込みである。
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